と言いながらも、相手に競り勝つことは大好きだ。
特にゴールラインをトップで通過し、高らかに両手を天に掲げた瞬間には、脳内から快楽物質が分泌されることを知っている。
それでは、まったくロードバイクに乗らずに速くなる方法はどんなものがあるのだろうか?
①機材への投資
②メンタルトレーニング
③イメージトレーニング
④食事による肉体強化
⑤日常における筋力基礎トレーニング
とりあえずパッと思いついたのはこんなところだ。
これがどの程度タイムに影響するのかを考えてみたい。
ハイレベル機材投入による効果は?
よく言われることだが、自転車にとってのエンジンは乗り手そのものであり、乗り手の強化が何よりもタイムに影響するということだ。しかし乗り手を強化してしまっては趣旨に反してしまうため、ここでは機材変更によるタイムアップを純粋に見ていきたい。
まず用意するロードバイクだが、これは一流ブランドメーカーのフラッグシップを用意すればいいだろう。
しかし、もしカテゴリーを無視して、UCIが規定する各ルールを度外視できるのであれば、もっと軽量でもっとエアロ効果の発揮できる機材が投入可能だ。
またコンポネートにしても、DURA-ACEなどとケチ臭いことを言わず、スラムRED以上のクラスの軽量パーツを投入することにより、バイク重量は5kg台となるだろう。
そしてタイムアップにもっとも貢献するであろうホイールには、Lightweightの80mmディープあたりを突っ込んであげれば、一気に高速域での優位性を手にすることができるはずだ。
予算的には200万円以内で仕上がるため、他の高尚な趣味から比べればこれでも安い部類と言っても良いかもしれない。
気になるタイムアップとしては、一般的な機材を25万円前後と考えた場合、平地での比較で1.5秒/1km、登りで3秒/1km、下りで1秒/1kmほどの短縮が期待できる。
複合で考えれば、3kmのサーキットコースでなんと5.5秒も速いのだ。
もし60kmのレースを想定すれば、一般機材より1分50秒早くゴールできるわけで、これは非常に効果が高い。
ただしまったく練習をしないという前提であれば、60kmのレースは過酷すぎるため、平地が多く距離の短いクリテリウムなどに持ち込むのが得策だ。
いくら機材が優秀であっても、相手が日常である程度の距離を乗り込んでいた場合、その差は長距離レースになるほど厳しい戦いとなってくるだろう。
メンタルトレーニングの重要性
自転車を速く走らせるために非常に重要なのがメンタルである。「火事場の馬鹿力」という慣用句の通り、人間は置かれた状況下によって、普段では考えられないパフォーマンスを発揮することがある。
これは自分の体験談ではあるが、トラックでのとあるTT競技での出来事だ。
スタートは50秒のカウントダウンスタートだった。
バンク内のフォームとバックを遠めに眺めていたが、バック側のスターターに選手がいない。
「DNSか?間抜けなヤツめ・・・」
と内心で笑っていたのも束の間、間抜けなヤツは自分だったのだ。
慌てて3本ローラーから飛び降り、走路を自転車で横断し、グローブも着けないままで無理やりスタートした。
結果は自己ベスト更新、そして選抜を勝ち上がり、最終的にはなかなかの評価を頂くことができたのだ。
不思議なことに、ペース配分やライン取りなどまったく考える余裕はなかったし、どう走ったのかも記憶がなかった。
ただ結果として速かったのだ。
このことから、自分自身を一種のマインドコントロール下に置く事で、平時を超えるパフォーマンスを発揮することができると考えられる。
他にもチームの先輩選手から言われたのが、「レース中に自分だけが苦しいと思ったら気持ちで負ける。他の奴らは自分より苦しいが我慢しているだけと思え」
という内容の言葉だった。
そう思うと不思議と山岳でのアタックでも振り切られることが少なくなったように思う。
要するに、自分の能力を良い方向に過信することで、100%以上のチカラを引き出すのだ。
今回のように、まったく練習を行わない場合、最大の不安要素は練習量による精神的な自信が得られないことだ。
「練習しなくても自分は速い、余裕で勝てる」と本気で思い込むことによって、タイムは肉体の限界を超えて大幅に向上するであろう。
常に勝つためのイメージ戦略をする
どこでアタックするのか、残り何キロで逃げるのか、誰の後ろに張り付くのか?何度も何度もイメージをくり返す。
はっきり言って地脚は無いに等しい。
まともに走りきるには、ドラフティングを多用するしかない。
しかし、先頭集団になんとか喰らい付き、まったく先頭を引かずに非道とも思われる走りで最終まで残ればまだ希望はある。
目標をどこに、ライバルを誰にするかで難易度が変わるが、練習量ゼロの人間ができる範囲などもちろん決まっている。
その制約の中でも、練習量の開きを、別の方法で埋めるのが今回の目的である。
実際に走ってみなければ、自分の身体がどの程度負荷に耐えうるかも分からない状況なため、様々なイメージを想定する必要があるだろうが、弱気になってはダメだ。
最低でも、優勝するシミュレーションを完成させなければ、その時点で負けることが確定してしまう。
また、基本的なスキルが無い場合は、かなり致命的になる。
それは、ロードバイク初心者のケースでは、頭の中でイメージできることが極端に少ないからだ。
まったく練習せずに・・・と命題しておいてなんではあるが、初心者の人が実践するなら、とりあえず練習はせずとも、数本のレース経験は積んでおいて頂きたい。
それでも練習したくないときは、ネット上のロードバイク動画をひたすら鑑賞することをオススメする。
ツールドフランスのダイジェストでも、ペダリングのノウハウ動画でも、参考になりそうなものなら何でもいいが、ひとつだけ注文を付けるとして、ノーカットの国内レースを早送りせずに見て欲しい。
最近では車載カメラが普及し、ライダー目線でレースの展開が分かるため、集団走行がどのようなものなのか、何が危険なのか、またどの程度の時間を走りきればいいのかということが、徐々に理解できてくるだろう。
そしてイメージの中に取り入れてもらいたいものはまだある。
ひとつはペダリングスキル、もうひとつはライディングフォームだ。
この2点はもやは練習でしか身に付かない。
残念ながら練習せずに習得するには、サイスポを何冊か熟読し、鏡の前で自分の姿を見てイメージをくり返すくらいしか方法が思いつかないが、頑張ってほしい。
食事で自転車に有利な肉体を手に入れよう
練習はしないが、食事制限は行う・・・そんなのは冗談じゃない。
フィクションサイクルの提案としては、好きなものを好きなだけ食べて、あとはサプリメントになんとかしてもらおうという作戦だ。
先に言っておくが、基本食がジャンクフードの人はこの作戦はあきらめて欲しい。
あくまでアスリート的な食事の延長線上で行える人オンリーだ。
ご飯は一般的なもの、そしてプロテインとアミノ酸系サプリでコンディションを維持するという方法だが、筋力量がもともと少ない体質であれば、タンパク質の摂取量を増やすなど、個々で調整して欲しい。
大切なのは体重管理であり、体脂肪率が22%~と軽肥満に分類されると、自転車は厳しくなってくる。
特に練習を行わない場合は、筋力も弱いため、ヒルクライムなどで自重による失速が顕著になるからだ。
しかし平地で行うクリテリウムであれば、自重はさほど影響せず、むしろスタミナとして優位であり、痩せ型よりも筋力量が多いため優位になる場合もある。
とにかく、健康的な食事を行い、追加の補助食品を摂取すれば、何もスポーツをしていない一般人よりはマシになるだろう。
そしてレースや走行会の当日に摂取するのは、アミノ酸系とビタミン系のサプリメントが効果を発揮する。
それこそ、数世代前の自転車選手であれば「オーバードライブ」という商品の名前くらい聞いたことがあるだろう。
スタートの数時間前から、エネルギーに変換されるタイミングなどを逆算して摂取していくのだが、カロリー系の他にも、ビタミン系やアミノ酸系なども、とりあえず安心剤として飲んでおこう。
正直効果があるかどうか分からないものでも、プラシーボ効果に嵌ればパフォーマンスを発揮するため、自分が効き目があると信じたサプリを用意しておくのが良い。
オーバードライブというサプリは、なぜか成分も理解されないまま、スポーツ選手の中で流行ったことがあり、おそらく最大の功績はプラシーボ効果だったのではないか、と今になっては思っている。
楽しみながら身体を動かすことは「練習」にカウントしないルール
いくらロードバイクに乗らないと決めても、ランニングや筋トレを行ったのでは本末転倒である。自分としては、ランニングや筋トレなどの高負荷トレーニングより、まだロードバイクに乗って風を感じたほうがマシというレベルだ。
しかし楽しさが優先されるスポーツや運動は「練習」とは別モノと考え、率先して取り入れていこう。
もちろん、ほとんどの自転車乗りにとって、自転車に乗ることは趣味であって、苦痛に感じることは稀だろうが。
夏はボルタリング、冬はスノーボード、それぞれの季節にぴったりな気持ちの良いスポーツは様々だ。
また気分転換の散歩などもいいだろう。
とにかく、ある程度動ける肉体を作り上げておかなければ、過去東京マラソンで心肺停止に陥った、あの芸能人と同じ運命を辿る可能性も十分に考えられるため、最低限の準備はすべきだ。
「自転車を速く走らせるために必要なチカラは何か?」という質問をすれば、ほぼ100%近い確立で、「脚力」という答えが返ってくるだろう。
これは間違いとまでは言い切れないが、その脚力を支えるためには身体全体の筋力が必要なのだ。
いかに強力な大砲があっても、土台が固定されていなければ発射した瞬間にどうなるかをイメージしてもらいたい。
自転車の世界で言えば「体幹」というキーワードを最近では良く耳にする。
読んで字のごとく、「カラダのミキ」のことだ。
〖幹〗 カン・みき
1.枝に対するもと。みき。手足に対する胴。ものごとの主要部分。
2.樹木の、根から上の方に伸びて枝を出す、太い部分。
「幹流・幹線・幹部・幹事・根幹・軀幹(くかん)・骨幹・本幹・主幹・基幹・語幹」
つまり、もっとも大切なのは身体の主要部分のほうなのだ。
さらに過激なことを言ってしまえば、自転車において脚力はさほど重要ではないという、フィクションサイクルが提唱する「脚力不要論」に集約される。
これは誤解しないで頂きたいのだが、もちろん脚の筋肉が発達してるほうが良いに越したことはない。
しかし脚力で上回る相手であっても、優れた体幹の筋力とバランス、そしてスキルさえあれば、高効率の点から、タイムでも優位に立てるということだ。
ちなみに体幹とは、腹筋、背筋、脊柱起立筋、大臀筋、腸腰筋など体幹部の筋肉であり、分かりやすく部位を言えば、「首」、「腕付け根」、「胸」、「腰」、「お尻」、「足付け根」の胴体部分を指す。
この部位を強化できるようなバランス系のトレーニングに通ずる運動を、私生活の中に上手く取り入ることができれば、自然と自転車は速くなるだろう。
自転車はスキルスポーツであるという利点を活かして走る
そして、もう一方のスキルだが、最重要なのがペダリングスキルだ。ペダリングこそ理屈ではなく、練習あるのみなのだが、このペダリングスキルの良い所は、一度習得してしまえば一生モノということだろう。
ペダリングとは不思議なもので、何十年毎日自転車に乗っていてもそれほど上達するものではないのだ。
これはプロやアマ、そしてママチャリに乗る一般人を観察して思ったことだが、「人は自分のペダリングロスを自分で把握できない」というひとつのロジックに基づく。
例えば、街中をガニ股で買い物用自転車を漕ぐおじさんが居たとする。
もしその踏力から推進力への変換が50%程度だとして、当人に向かって「半分損してますよ?」と指摘してもまず理解されることはない。
またロードバイクの初心者も同様、誰かに指摘されない限り、自身のペダリングが良いのか悪いのかは気が付かないだろう。
ペダリングにロスが発生しても、特に不自由を感じるわけではないし、膝に痛みが出るなどしない限りは、無関心でいることが多い。
しかしケイデンス計を導入し、実際のMAX回転を試してみて初めて、その数値が思いのほか上がらないと気が付くのだ。
たまにネット上の質問サイトで見かけるやりとりで、このようなものがある。
「高ケイデンスがなかなか回せない、200rpmを目指したい」という質問に対して、「高ケイデンスは無意味、プロでもそんなに回すことはない、回して何がしたいの?」と答えているケースだ。
これは非常にもったいない回答だと思う。
自分が考えるに、確かにレース中に高回転を回す意味などない。
しかし重要なのは、回せるか?という部分だ。
最大値はあくまで可能性の話であり、例えばF1マシンのエンジンは何rpmまで回るのか?と問えば、20000rpmまでは軽く、その上でも余裕で回転を上げることができるだろう。
しかしレース中にそんな高回転を常用することは無い。
これは一般の乗用車の上限の3倍程度の回転であり、もし同様の回転数まで市販車のエンジンを回せば、激しい周期振動が発生することが容易に想像できる。
ではこの振動の原因は何か?
精度やバランスの悪さによるロスだ。
この例え話をそっくりそのまま自転車のペダリングに置き換えてみよう。
・高回転が回らない = 低回転でもロスが発生
・高回転が回せる = 低回転でもロスが出ない
ということで、ペダリングが上手いか下手かは、高回転を回してみることによって一定の判断ができるのだ。
ちなみにフィクションサイクル店長の最高ケイデンスは240~250rpmほどで回すことが可能だが、これは長期に渡るトレーニングで培われたものではない。
スピニングバイクや電動ローラーなど、強制的に高ケイデンスを保つトレーニングによって短期間で習得したものだ。
このように、トレーニングの質を向上させることで、自転車に乗る時間を最小限に抑えながら、高効率な乗り方をマスターするという方法もある。
そしてもうひとつ、重要なスキルとしてダンシングを含むバイクコントロールがあげられる。
この辺りも一生モノのスキルであるため、習得しておいて損はない。
問題はどう習得するかだ。
これは説明が非常に難しい。
はっきり言ってある程度のレベルのライダーであっても、完璧にマスター出来ている人は少ない。
特に平地の多いロードレースではあまりこのスキルはタイムアップに貢献しないため、ここではあえて無視することにする。
とは言うものの、ひとつだけこの文章を書いていて面白いことを思い出したので語らせてもらう。
その昔、自分の教え子にFという男の子がいた。
彼は真面目で与えたメニューはすべてこなした、しかしおそろしく不器用だったのだ。
なんとダンシングどころか、立ち漕ぎすらまともにできなかった。
いくら指導しても不可能と悟り、シッティングだけでなんとか頑張るように指示を出した。
そして数年後、彼はある大会のスプリント競技においてシッティングだけで優勝したのだった。
もちろん関係者は騒然とし、仲間内は喜びと同時に爆笑を堪えられなかった。
ここから分かるように、複雑なコース設定でなければ、高度なバイクコントロールはそれほど必要ない。
ロードバイク年間走行距離ゼロkmの人間 vs 元オリンピック日本代表選手
さていよいよ実戦編に移りたいと思う。対戦相手は誰でも良かったのだが、ある程度世間にその速さがある程度世間に知られているという理由から、バルセロナオリンピックロードレースの元日本代表でもある藤井晃二氏(44歳/架空人物)をターゲットとさせて頂いた。
氏は現役実業団チームを引退しており、もしかしたら勝機があるかもしれないという甘い期待も多少はあった。
一方のフィクションサイクル店長(当時は開業前)は無事に年間練習走行距離ゼロを達成するだけでなく、過去5年間以上に渡ってまったくトレーニングを行っていないという完璧な状況を作り上げていた。
もちろんウエイトもオーバー気味であり、周囲からは本当に自転車に乗れるのか心配されるレベルであった。
※長期ブランクのあった何年も前の話です
前日までの取り組みは、しっかり睡眠時間を確保することと、使用機材のコンディションを完璧な状態にすることだけだ。
レース当日だけはローラー台を持ち込み、スタートの1時間半前から徐々にアップを行い、これから始まる高強度な運動に備えた。
久々に乗るロードレーサーの感触ではあったが、脚は回るようだ。
ポジションは短距離の短時間戦ということもあり、かなり前乗りのTTポジションに近いセッティングを採用。
肉体面でも念入りなストレッチやカーボローディングでできる限りの体制は整えた。
コースは全長2kmほどのショートサーキットで、若干の高低差があるのが不安要素だったが、5週程度であれば、逃げ切ることも可能だろうと、そのときは確信していたのだった。
スタートしてすぐに先頭集団は形成されたが、速度はそれほど高くない。
AVEにして41~43km/hほどで、藤井さんの番手に付けていた自分には多少の余裕があった。
しかし3週目に突入したあたりから、まず心肺が限界に達そうとしている気配を感じた。
いくら息を吸い込んでも酸欠気味で心拍が上がる一方だ。
集団のペースはもっと速くなるとか思いきや、先ほどより若干速度は落ちていた。
よく状況を見れば、先頭の選手達がロードレースではお目にかかれないほどの牽制合戦をしている。
「ここでアタックして3人くらい付いて来てくれたら逃げが決まるかもしれない・・・」
そう考え、登りが平地に変わるやや手前からアタックし、集団を飛び出す。
これに反応したのが後続1名。
逃げが決まったと確信した次の瞬間だった。
「重い・・・、これ以上前に出れない・・・」
もはや風除け無しでは、まともに走ることもできなかった。
あきらめて集団に吸収されるが、今度は集団が速すぎる。
いや、ペースは変わっていないのだが、付いていくことができない。
しかたなく第二集団の最後部まで後退するが、それでも苦しい。
大した負荷などかけていないのに、脚にどんどん乳酸が溜まっていくのを感じる。
まだ使えそうな脚の筋肉部位を探し、無理な引き足ペダリングに変更したのも束の間、下腿三頭筋(ふくらはぎ)が一瞬にして崩御。
シートの後方にスライドしてハムストリングに期待するがやはり厳しい。
もはや残されたチカラはどこにも見当たらなかった。
まるでセレンゲティの大草原で弱った獲物を探すハイエナのように、今の自分でも追いかけられそうな風除け役を必死で捕まえゴールを目指した。
ラスト1週、と思い後ろを振り返ると、日本屈指の実業団であるAのジャージが目に入った。
自分には無関係なフラッグが振られる。
先頭集団に衝撃的な展開などなかったようだ。
藤井さんはアタックするわけでも、スプリントするわけでもなく、圧倒的な力量で集団の先頭に君臨していたのだ。
両手を高らかに上げる藤井さんと、それと同じジャージを来た選手が2位と3位に入る。
ワンツースリーフィニッシュというやつだ。
それを見届けた自分はコース脇で停車したが、あいにくビンディングペダルを外すだけの筋力も残っておらず、そのまま草むらに倒れ込むことになった。
※これはフィクションです。
写真に写っている藤田晃三さんと、今回の藤井さんという人物はまったくの無関係です。
結論
まったく練習せずにロードバイクで速く走ることはできなかった。自分自身でも驚くほどに走れなかったわけだが、しかしその中でもいくつかの発見があったのは一定の成果だろう。
まず年間走行距離に対して、どの程度ロードバイクの速さに反映できるかという点。
自身がもっとも走り込んでいた時期で年間約2万kmである。
そして年間1万km、5000km、2000km、1000km、0kmと、それぞれの時期での練習強度の違いにおけるコンディションでもっとも差が出たと実感したのが、0kmと1000kmとの間だ。
まったく乗らないでいるのと、少しだけ乗るという差はとても大きい。
つまり逆に言えば、年間1000km程度でも最低限の自転車能力は維持できるかもしれないのだ。
もちろん「乗る」とひとことで言っても、内容により成果は大きく変わる。
無意識に年間3000km走るのと、トレーニングメニューを組んで1000kmを消化するのでは、後者のほうが得られる効果が大きい場合もある。
圧倒的な速さを手に入れるには、やはりLSD「Long Slow Distance(長距離をゆっくり走る)」が絶対に必要になることは間違いないであろうが、時間的な余裕のない社会人ともなれば、短時間、短距離でどれだけの密度を盛り込めるかが重要となってくる。
練習は極力したくないが、ロードバイクで速く走れるようになりたいと願う人は、まず「何を目的に走るのか」ということを明確にするのがいい。
自身の欠点を洗い出し、効率よくトレーニングを行うため、誰かにコーチをお願いするものオススメだ。
ポイントが絞り込めれば、その分だけ練習量を減らすこともでき、自転車に乗りたくない人には朗報となるだろう。
まったく練習しないために起こる負の連鎖
乗り込み量が少なければ能力が低下し、その自転車の持つ性能を発揮されることができなくなる。たとえば、どんな機材を使っても、その特徴や感触を掴むことが難しくなってくるのだ。
よくプロの機材は硬いと言われるが、それを全グレードで同じように感じてしまうことがある。
入門用の低剛性な機材でも、フレームやホイール、クランクなどのシナリ量を感知できなくなり、「これはハードなもの」と誤認してしまう。
ちょっと機材に詳しくなった初心者が、雑誌の受け売りだけで機材の評価を行ってしまいがちな理由も分かる。
違いが分からないことを周囲に察知され、機材オンチと思われることを恐れるあまり、教科書を熟読して、正解にたどり着こうする。
数あるスポーツショップの店長も似たようなもので、そうならないためには走り続けるしかない。
それが強迫観念のように感じてしまえば、やはり自転車に乗ることが楽しくなくなってしまいがちだ。
客にはあえて公表しないものの、自転車業界には隠れ自転車嫌いが少なくない。
もしかしたら、根底にあるのはこんな理由なのかもしれない。
また今回のように、まったく勝機のないレースも楽しくないものだ。
自転車に乗らないために、走ることでの楽しさを見出せず、さらに気力を削がれてしまう。
そうならないためには、普段からモチベーションを高く保てるように、自身をコントロールしていくしかないだろう。
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