2015年10月17日

【最新2016】 パナソニック2016年通学自転車カタログ

国内2位メーカーのパナソニックの通学自転車カタログがブリヂストンに続いて公開された。
内容的には、一部の新商品を除き、2015年からのラインナップを継承するカタチだが、ブリヂストンに見受けられた国内生産への回帰がこちらでも行われるようだ。

やはり各メーカーともに円安の影響は深刻な問題のようで、海外生産でのメリット希薄化によって、日本製の高付加価値商品が追加されたが、これは同時に最低価格ラインのボトムアップを意味し、カタログ最低価格帯のアーネストUにおいても5000円、比率にして約20%程度の値上げが実施されている。
これは簡単な理由であり、為替レートが昨年10月で1ドル108円だったところから、今期の最大値1ドル130円前後(前年比120%)のさらなる円安加速を予期したからだろう。



単価アップはどう影響するか?

これは個人の自転車販売店サイドの問題であり、一般ユーザーの関心はそれほど高くないことかもしれないが、自転車販売店の気持ちを代弁するつもりであえて言いたい。

物価の上昇はインフレが伴っていれば比較的健全な経済と言える。
しかし「庶民の乗り物である自転車」の購入層は依然として不景気という認識だろう。
株価上昇で一部の富裕層に富が回ったとしても、一般自転車界への効果は限定的だ。
事実上のスタグフレーションが発生しているのだから、一方的な値上げは急激な客離れをおこす危険性が高い。

これはつまり、「若者のメーカー車離れ」とでも言ったところだろうか。
この傾向はすでにかなり前からおこってはいることなのだが、この流れがさらに加速し、購入者たちはより安価な自転車商品の並ぶ大手自転車チェーン店や、大型流通ブランドのオリジナル商品に走ることが予想される。

客離れをおこした個人販売店は、修理単価を上げたり、サービス向上での差別化を図るだろうが、これも一時的な時間稼ぎに過ぎず、ジワジワと体力を奪われ最終的に待っているのは劣悪な労働環境か、廃業を迫られるかのどちらかだ。

もちろんこんな話は極論ではあるのだが、スポーツ車などのマニアック商品を取り扱うお店以外は、現実にこのような問題がおこりつつあるのが現状だ。

この問題によって被害をこうむるのは個人自転車店だけだと思われるかもしれないが、もし近隣の自転車店が無くなったとしたら、どこに自転車の修理を依頼すればいいのか?

「パンク修理一週間」
まさか?と思うかもしれないが、とあるディスカウント店に自転車修理を持ち込んだ際、実際に言われた期間である。
自転車店の減少による不便は、このように身近なところで感じることになる日が来るだろう。

とは言っても、もちろん需要と供給のバランスがあるので、あらたな形態の修理専門業者が現れるであろうが、修理の技術が確かである保証は無い。

なぜ大手メーカーは自転車を安く作れないのか?

「ママチャリはいくらか?」
そう尋ねられて想像する価格は安くて1万円、高くても3万円以内だろうか。
しかしメーカーのカタログは最低3万円からスタートだ。
それに希望するスペックを探していけば5万円台に達する。

近隣の大手流通ブランドや、自転車チェーン店に行けば、そこそこなスペックの自転車が2万~3万円で売っているのはご存知だろう。
具体的な会社名はここでは伏せるが、彼らは巨大な販売網とスケールメリットによって低価格を実現している。

であれば、こんな浮世離れしたプライスを高々と掲げる国内の自転車メーカーは、企業努力が足りず、ただ値上げによって自らの懐を温めているボッタクリ会社なのか・・・?といえばそうではない。

大手メーカーのブランドを背負うということは、品質に徹底してこだわるということだ。
自転車の製造ラインを見学に行ったことのある自転車店関係者なら知っていることだが、工場の多くのスペースを検査機器が占めている。


これはただの例え話だが、ここにリンゴが2つあるとする。
ひとつはとりあえずリンゴであることだけが分かっている。
もうひとつは多くの時間をかけて、農薬残留量、放射性物質の測定、果ては産地や生産者の身分や、糖分の量まで数値化された検査証明書が付いている。

前者は1個100円、後者は1個150円。
さて、どちらを選ぶ?と聞かれたら大抵の日本人は後者を選ぶだろう。

では、もしこの2つがまったく同じ木から同時に収穫されたリンゴだったら・・・
二つのリンゴの差額の50円は「ただの安心料」に過ぎなかったということになってしまう。

この安心料をどう見るかによって、受け取る価値は人それぞれではあるものの、世界的ブランドの名前を有する企業にとって、品質事故は絶対に起こしてはならない問題である。
そのためには、コストパフォーマンスの優位性を犠牲にしても、高い規準をクリアさせなければいけないというメーカー内部のジレンマがあるのだ。

近年では自転車の安全基準のひとつであるBAAが導入され、ユーザー目線でも安心安全の自転車選びが容易になってきたが、そのBAAより遥かに高い規準を自身に課しているのがパナソニックというメーカーだ。

つまり、まったく同じ方法で同じ商品を作ったとしても、必然的に様々なコストがかさみ、最終的にはカタログ価格に反映されることとなる。

日本の自転車メーカーの共通点は、良く言えば「愚直」、悪く言えば「ただの不器用」である。
パナソニックは自虐的とも思える過剰品質によって自らのブランドを守ると同時に、ジワジワと窒息しているようにも見えるが、もしこれを上手く付加価値として商品に組み込めば勝機はまだあるのかもしれない。

ちなみに、どんなに安心安全が証明されたからといって、そのリンゴが食べて美味しいかどうかは別の問題である。

さらに追加された「日本製」ラインナップ・・・だがガチャリンコは消滅

昨年のシナモン、今年のタフベルトJP・ガチャリンコの2機種によって、自転車の国内生産回帰を果たしたパナソニックは、来期モデルとしてタフベルトJP・ガチガチロックとジャンボリーの国内生産を始めるようだ。
(※実用車のレギュラーは過去より国内生産継続)

しかし一方でパナソニックの伝統的自転車「ガチャリンコ」が2015年をもって終焉することが判明。
その長い歴史に幕を下ろすこととなったガチャリンコは、遡ること15年以上前、まだパナソニックがイメージモデルとして芸能人を起用していた時代に、野村佑香のテレビCMを経て大ヒットした商品だ。
デビュー当時から現在まで大してブラッシュアップされることもなく、モデル末期においては「これ誰が買うんだろうか・・・?」というくらいマイナーなフラッグシップ商品であったが、一部の地方都市では人気があったと聞いている。
特徴的なギミックを持つガチャリンコも、ブリヂストンのアルベルトのように毎年進化を遂げていれば、まだまだ互角に渡り合えるポテンシャルはあったとは思うが、「もはや時遅し」でモデル終焉に追い込まれたのかもしれない。

パナソニックの日本生産ラインで得意としているのが、ラグ工法のフレーム造りだ。
ブリヂストンが2016年で「上尾式」をうたうダイキャストを得意とするように、パナソニックにも独自の生産ノウハウを持っている。
逆に言えばスチール系のラグフレームしか造れないのだが、これは一般自転車にとって、もっとも最適な工法とも言えるものだ。

少し話は脱線するが、現在日本国内に自転車の生産ラインを持つマスプロメーカーは、ブリヂストン、パナソニック、ミヤタの3社しかないと言われている。
その中で、一般自転車のラグフレームを生産できるのは、実質上パナソニックしか存在しないのが現状だ。
良く自転車屋のおやじ達が「自転車は国産のラグが一番だよ」と昔を懐かしんでいるが、そんなものはもはや絶滅危惧種である。
今回2016のラインナップで復活する国産ラグフレームではあるが、やはり手に入れるには6万円台の価格は覚悟しなければならないようだ。


ちなみにパナソニックの国産自転車はJIS(日本工業規格)のマークが貼られているが、これもまた非常に希少なものとなっているのをご存知だろうか。
JISについては法改正以降、規準のクリアだけでなく、JIS認定工場で生産された自転車にしかマークを貼ることができなくなったが、国内工場は先ほど述べたとおり、ブリヂストン、パナソニック、ミヤタの3会社しかなく、そのうちブリヂストンはBAAに一本化でJISマーク消滅、ミヤタについては国内生産が極少数ということもあって、JISマーク適合自転車は実質パナソニックだけとなっている。

全ラインナップで両足スタンド&リアキャリアを標準装備

通学自転車のカタチには大きく分けて2種類ある。
それは一般的にスタッガード型とダブルループ型という名称で区別されているが、それぞれ以下のような特徴がある。

スタッガード型
・ハンドル:オールラウンダー(まっすぐ形状)
・スタンド:一本スタンド
・リアキャリア:装備なし

ダブルループ型
・ハンドル:アップハンドル
・スタンド:両足スタンド
・リアキャリア:装備あり

学校への通学は最近ではダブルループ型、いわゆるママチャリ人気の傾向ではあるが、一部の学校でスタッガードが指定されている地区もあり、その場合はリアキャリアと両足スタンドを新車購入時に別途購入するという必要性があった。
これはこれで自転車店としては売り上げに貢献する美味しい部分ではあったのだが、来年からはそうはいかないようだ。

自転車界に長くいる人間から見れば、スタッガードにキャリアと両足スタンドが付いてカタログに載っているのは、まさに邪道であり、スタイルの破壊だと思ってしまう。
しかし反対に考えれば、今まで古い考えにしばられ、市場から要望の声が上がっていたにも関わらず、スタイルの改変を行わなかったのはメーカーのエゴなのかもしれない。
今回の全モデルに両足スタンドとリアキャリアを標準で装備させる発想は、今後各社に影響を与えるだろう。

電動アシスト自転車の2016モデルはまだ未発表

通学カタログということもあって、男女それぞれに向けられた商品が1台づつ掲載はされているものの、これは現行の2015年モデルであって、新商品ではなかった。
もともとパナソニックの電動新機種のデリバリー開始は年末から年始にかけてのことなで、これは予想の範囲ではあるが、やはり電動アシスト通学の商機を逃さないように意識しているようだ。

Panasonic 通学自転車カタログ 2016/春

クリックで拡大





 





関連

【最新2016】 ブリヂストン2016年通学自転車カタログ
http://fiction-cycles.blogspot.jp/2015/10/2016-bsc-catalogue.html

※フィクションサイクルではパナソニックの自転車を取り扱っておりません

0 件のコメント:

コメントを投稿

人気のトピックス(全期間)

/*追跡スクロール2*/