2014年2月21日

またしてもガラパゴスに陥った日本の自転車

前にも書いたことがあるが、日本の自転車業界がなぜ衰退したのか?
それは早い話、国内マーケットをターゲットにしたのか、それとも世界をターゲットにしたのかの差であろう。
かつての日本の自転車技術はかなりの高水準であり繁栄を誇っていたものである。
しかし、古くはカワムラ、山口、セキネ、ゼブラ・・・、記憶に新しいところでは、出来鉄工所、ヨコタとその長い歴史に幕を降ろしてきた。
他のメーカーも名前さえ残っているものの、海外から商品を引っ張ってくるだけの商社化したものや、いつの間にか海外の資本傘下に入り、ゾンビのように生きながらえているものなど、どこの会社とは言わないが、100%自転車稼業で飯が食えるメーカーは皆無に等しい。
そして日本の自転車二大メーカーである、BやPですら、親方の気分次第でどうとでもなってしまう危険性を十分に秘めている。

唯一の例外はシマノだけだろう。
もし万一、明日日本の自転車マーケットがすべて消失したとしても、ここだけは生き残れると思われる。
なぜならシマノの顧客は世界中にいるからだ。

だから、自転車メーカーは今こそ世界に目を向けなければならない。


なぜ突然こんなことを言い始めたかというと、ネットで次のような自転車を見かけたからだ。




2014 Cannondale E-Series [Tramount]

正直な気持ちを言うと、欲しい。
欲しくてたまらない。
数年前からユーロバイクでE-BIKEが盛り上がっているは知っていたが、わずか数年でここまで完成度を上げ、洗練された商品に仕上げて来るとは、まさに想定外だった。

しかしこの自転車、日本国内では販売はおろか、輸入すらできない状態だ。

フィクションサイクルが電動アシスト自転車にリアルスポーツでの発展の可能性を感じたのは今から8年前の2006年のことである。
発売されたばかりのパナソニック「ハリヤ」をダート仕様に変更し山に持ち込んだとき、その未知の楽しさに「これは必ず行ける」と確信した。
だが当時のハリヤはそれほどパワーも耐久性もなく、さんざんエラーに悩まされたのち、あっけなく壊れてしまった。
周囲からは「電動は年寄りや主婦が乗るものだ」「おとなしく普通のMTBに乗るのが無難だ」など冷ややかな反応が返ってきた。

それから早8年が経過。
何が変わったかと言えば、ハリヤは当初のコンセプトを踏襲。
フレームとパーツが少しだけ立派になり、バッテリーは容量が大きく、そして制御のためのセンサーが追加され、配線類が煩雑になった。
周囲の反応としては、ユーロバイクに足繁く通う同業者の間では話題に上がるものの、残念ながら国内世論を動かすまでには至っていない。

BOSCH製2014ユニット

非常に小さいチェーンリング。
これに拒否反応を起こすのは、なんとも保守的な発想である。

「チェーンリングは大きいほうがカッコいい」
これはなんとなく聞いたことがあるかもしれないが、他にも「サドルは高いほうがカッコいい」「ステムは長くて低いほうがカッコいい」「リムハイトは高いほうがカッコいい」「フレームはラグ付きがカッコいい」「ホリゾンタルで細いほうが・・・」
様式美は大事だし、それはフィクションサイクルも大いに賛同するが、懐古主義にこだわりすぎて新しい技術を受け入れないのは実に愚かしい。

新しい技術といったのは、まさにこの小さいチェーンリングのことだ。
「小さいから漕いでも進まなそう・・・」と思いがちだが、電動自転車の場合、「クランクの回転=チェーンリングの回転」とは限らない。
従来は人間が回す“遅い回転”に対し、“速い回転”のモーターが減速機を用いて回転を合わせ、一本の軸線上に出力していた。
ここまでの技術はユーロバイク2014(2013/9)の写真を見る限り、BOSCHの他に、日本のヤマハ、パナソニックも追従していたように見える。

Eurobike Ebike systems for 2014
http://ebikeee.com/2013/08/13/ebike-systems-for-2014/

しかしBOSCHの新型ユニットを見る限り、完全に逆転の発想であると思われる。
オートバイのドライブスプロケットが小さいのは、車輪の回転より遥かにエンジンの回転数が高いからであって、電動アシスト自転車でもモーターを使っている以上、同様の現象が発生する。
このBOSCHユニットがモーターの回転数をどこまで減速しているかは不明だが、減速比を小さくできれば、歯車モジュールも小さく設計でき、ユニットのコンパクト化へ繋がるだろし、クランクの回転を早くしてドライブギアに伝えるのなら、シマノの内装3段程度の構造のもので十分だ。
また、大きなチェーンリングはMTBにおいて岩へのヒットなど、メリットよりデメリットが大きかったことを考慮すれば、BOSCHの設計思考はまさに大正解である。

この一連の流れ、iPhoneとガラケーの関係に似ていると思う。
iPhoneが登場するまでの日本の各ケータイメーカーは従来型の改良に余念がなかった。
折りたたみのヒンジの構造、ボタンのタッチの感触、流行のカラー、買い替え動向に繋がるより良い機能の追加・・・
そこに登場したiPhoneは、折りたためない、テンキーもない、カラーも1色、それまでユーザーが好んで使っていた機能の踏襲もなし。
しかし売れた。
ユーザーが求めているものを提供するのではなく、メーカーが提唱したものがユーザーのスタンダードになって行った典型的な例だ。

今まさに日本の電動アシスト自転車の中でそれは起きている。
既存ユーザーの声によって肥大化したバッテリー。
シングル→ダブル→トリプルと増え続ける制御センサー。
多機能化してボタンだらけになったスイッチ。


BOSCHが電動アシスト界のアップルになる前に、日本のメーカーはもっと次の世界に目を向けなくてはならない。
電動アシスト自転車を発明した日本人なら、不可能なことではないと思う。

ただし勘違いしてはいけないことがある。
それは、短絡的に、世界で流行っているからといって、そのまま同じものを日本国内で展開するののでは失敗が目に見えている。
日本というお国柄は、優れた商品は作れても、文化を創るということは苦手だ。
iPhoneのような端末だって、そのさらに前に似たようなものが日本国内でも発売されていたが、だがニッチな市場から抜け出すことはできなかった。

シャープのPDA「ザウルス」は2000年の商品。
iPhoneの販売はそれから遅れること7年後の2007年。
日本でヒットしたiPhone4はさらに3年後の2010年まで待たなければならなかった。

電動アシスト自転車をスポーツ面で開花させるならば、まずは主戦場を海外に置かなければならない。
日本の極少数をターゲットとしたマーケットでは優れた商品は生まれないし、独自進化を遂げたがゆえに、世界での競争力を失った同時に製品力もうしなったガラケーメーカーと同じ運命を辿ることになるだろう。

いろいろ偉そうなことを書いたが、とにかくこの自転車を国内で販売してくれるのなら、フィクションサイクルとしては特に文句はないのだが・・・。

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