2012年10月8日

あさひオリジナル電動「enersys(エナシス)」


世の中には二通りの人間がいる。
新商品が出たらすぐに欲しくなってしまうタイプと、世間の評価をじっくり吟味してから購入を検討する慎重派タイプだ。
失敗をしたくないのであれば後者だが、「目新しさ」という価値を手に入れるには前者しかないだろう。

当然ながらフィクションサイクルは新しいものに目がないので、すぐに飛びついてしまうのであるが、電動アシスト自転車といえば高価な買い物。
おいそれと何台も購入する訳にはいかない。
そんなときはやっぱり持っている人に借りるのが一番手っ取り早い訳で・・・。

「ちょっとだけ貸して頂戴」などと言いながら飽きるほど乗り回してみた感想を書く。

モーターユニット

フロントインハブモーター

ギアクランク内蔵型トルクセンサー

アシスト制御ユニット

見て分かるとおり、構造はサンヨーエナクルとほぼ同じだ。
違いは回生充電機能が備わっていないことくらいなもの。

まず漕ぎ始めた瞬間に感じるのは、やはりサンヨーに似たフロントモーター独特の走行フィーリング。
サイクルベースあさひとしては初のオリジナル電動となるが、デビュー作からかなり完成度は高いレベルにあると言える。
パワーは現在主流であるパナソニックやヤマハのセンターユニットより控えめな感じはするが、けして弱すぎる訳ではないし、坂道などアシストが必要な場面ではきちんと電動パワーを発揮してくれるようだ。

不満があるとしたら、これは構造的なものだが、トルクセンサーがサンヨーと同じくスプリング式だと思われるため、強く踏み込むとバネを踏んでいる感触がダイレクトに足に伝わってくる。
大手は非接触式センサーを採用するが、これは10年以上の歳月をかけ必死に開発した成果であり、当然特許取得されているため、あさひとしては採用したくても出来なかったと考えるのが妥当だろう。
また気になったのが走行時のモーター音だが、フロントモーターはモーターが乗車する人間より手前の位置に取り付けられているため、作動音が通常より大きく聞こえるためだ。
この点は現在すでに販売されているサンヨーやパナソニックでも同様の問題はあるが、それに比べても少し大きい気がした。

気になるユニットの製造元だが、あさひのHPによると
カメラ用シャッターの世界NO.1メーカーで精密小型モーターでも高い実績を有する「日本電産コパル株式会社」との共同開発で、業界トップクラスの高出力・高耐久を実現し、パワフルでスムーズなアシスト走行を可能にしております。
となっている。
「日本電産」といえば、精密小型モーターのトップメーカーであり、グループ会社の「日本電産コパル」はレンズシャッター専門メーカーからスタートして、現在では電子機器類で世界シェアを持つ会社だ。
電動アシスト用のユニットが小型の分類に当たるかは置いておいて、生産元としてはこれほど信用できるサプライヤーは少ないだろう。
個人的に一番驚いたのが、細かい部分ではあるが、センサー一体型の右クランクだ。
独特のフォルムのアルミ成型がこの自転車の“顔”ともいえる存在感を醸し出している。
コストを考えれば、もう少し簡略化できたかもしれないが、この部分の仕上げは非常に評価できる。

バッテリー

7Ah大容量リチウムイオンバッテリー

バッテリー裏面表記 26.6V 7.0Ah

バッテリー底 6極メス端子

本体側バッテリー差込部分 6極オス端子

そして電動アシスト自転車におて生命線とも言えるのがバッテリーだ。
こちらも信頼性で間違いないであろう「NEC製」となっている。
製造元表記が思いっきり中国語な点はご愛嬌として、NECといえば最大手のパナソニック製電動アシスト自転車でも一部で採用しているとされるほどのメーカーである。
しかもあさひHPによると
バッテリーは、長寿命+高信頼の「NECエナジーデバイス株式会社」及び「日本電産コパル株式会社」との共同開発で電気自動車(EV)・ハイブリット自動車(HEV)などに多用されている高性能ラミネート型リチウムイオン電池を採用することで、高耐久を実現し、電動アシスト自転車には欠かせない長距離走行が実現可能です。
とのことで、モーターユニットとの相性も問題なさそうだ。

バッテリー底の端子部分は6極となっており、+-以外は電池残量を手元スイッチに送る通信端子等をを含んでいるものと思われる。

一つ残念に思ったのは7Ahという大容量にも関わらず、電池残量計が3段階しかなく大まかでしか把握できない点だ。
ちなみに手元側の電源スイッチの残量計も同じく3段階表示であった。


その他のパーツ構成も自転車屋が見てもまあまあ納得できるスペックとなっている。

各パーツ

制動力に定評のあるダブルピボットブレーキ

ディンプルキー採用のサークル錠(パナソニックやヤマハと生産元が同じと思われる)

内装3段シフトとパイプキャリア

ヘッドパーツのサビ防止と思われる樹脂カバーとクルピタ

全体で一番安っぽく見えてしまうリム部分(リム:アルミ、スポーク:鉄)

バッテリーから電力供給するLEDライト採用

良く出来ていると思ったのが、パイプキャリアとそこに取り付けられたサークル錠だ。
おそらく現在もっともニーズの多い、チャイルドシート取り付けも視野に入れたものと思われるが、このサークル錠の取り付け位置は数年前にブリヂストンがアンジェリーノミニで採用したものだ。
大手が試行錯誤を重ねたものを後発メーカーがいきなり持って行ってしまう。
なんとも現代らしい構図と言えるだろう。

さて、ここまで分析した結果、この商品が買い時なのか、それともしばらく待つべきなのか・・・
という結論だが、残念ながらフィクションサイクルの意見としては見送りの方向となった。
なぜかと言えば、やはり商品の完成度に少し不満があったからだ。
それは毎日のようにパナソニックやヤマハの最新型に乗り慣れている人だけが感じると思うが、やはり長年の歴史を持つ大手メーカーはアシストフィーリングの味付けを心得ているという点だ。

同じ食材を使った料理であっても、最後の味付けがイマイチであれば全てが台無しになってしまうのと同じで、あさひという会社もまだ電動アシスト自転車を扱い慣れていない雰囲気が漂う。
スペック上の数字だけでは語れない部分、電動アシストは奥が深いのだ。

ここまで酷評を書いておいてなんだが、一般の電動アシスト自転車ユーザー向けの回答になると話は変わってくる。
まず、普通の自転車から電動にそろそろ買い換えようかしら・・・
と考えている方だったら、エナシスは十分に選択肢に入れて言いと思う。
最大の魅力はコストパフォーマンスだ。
希望小売価格79,800で7Ahという大容量バッテリーを採用しているのは他にはなく、実売で同価格のパナソニックNXは3.1Ahしか容量がない。

しかもこのエナシス最大の魅力はサイクルベースあさひが提供する「エナシスメイト」だろう。
詳しい特典の内容の記載は控えるが、会員証の保証内容を読めば衝撃が走るほどの豪華な内容となっている。
正直なところ、万一の事故さえ気をつけていれば、3年間の間は使用にともなう修理やメンテナンス費用がほとんどかからないのではないかと思えてしまうほどだ。
加入は3,000円となっているが、内容から考えれば間違いなく元は取れるだろう。
少し遠くてもあさひに持ち込みたくなる・・・。狙いどころは流石としか言えないが、細々と修理で生計を立てている自転車店の主人の気持ちを思うと、少し居たたまれない気分にもなってしまうのも事実である。
なお、ネット販売の予定はないとの事なので、実際の店舗に行く必要があるようだ。

ということで、近所に「サイクルベースあさひ」があって、尚且つ電動への買い替えを考えている方は選択肢として検討してみてはいかがだろうか。

サイクルベースあさひHP エナシス
http://www.cb-asahi.co.jp/html/tokusyu_enersys.html


関連記事
今ベトナムで日本の中古電動アシスト自転車が熱い
http://fiction-cycles.blogspot.jp/2015/10/from-hanoi-in-vietnam.html

0 件のコメント:

コメントを投稿

人気のトピックス(全期間)

/*追跡スクロール2*/