2012年7月22日

セイコーファイブ(SEIKO5)に見る自転車業界の明暗


セイコーと言えば世界中で見かける超有名メーカーであることは間違いない。
高い技術を持ち、ブランド的にも性能的にも素晴らしいものがある。

一方の日本の自転車メーカーと言えば、ブリヂストンやパナソニックなどの大手グループ関連企業を除けば、世界に通用するメーカーは皆無に等しい。
それでも1980年代まではツールドフランスを走りステージ優勝したこともあったジャパンメイドの自転車。
なぜここまで衰退してしまったのだろうか?

今では品質は台湾製や一部アメリカ製がレーシングバイクの最高水準と言われるほどに成長を遂げているが、かつてヨーロッパの人々を驚かせた日本の自転車は見る影もない。
ヨーロッパブランドの自転車とて、製造のほとんどを台湾や中国などのアジア圏に移してしまったため、かつてのように盛んな産業とはいかないが、それでもイタリア車は高級ブランド車の代名詞的存在に君臨し続けている。

日本の自転車メーカー衰退の一員として「ママチャリ文化」が関係しているという話を良く聞くが、おそらくその通りだと思っている。
日本の自転車メーカーが一番のマーケットとしていたのは日本国内での販売であり、特に「ママチャリ」という他の国には存在しない商品が主力であった。
自転車界はすでに数十年前からガラパゴス化が進んでいたのだろう。
「ママチャリ」という代物はその用途から、高性能である必要もさほどなく、また普段の足としてブランドに執着するものでもなく、日本人特有の「有名なものを買っておけば安心」という考え方に支えられて、なんとか国内の需要を満たすかたちで生き延びてきた。
しかし、最初は「安かろう悪かろう」だった海外製品も少しづつ品質が向上し、今となっては日本メーカーの主力商品であった「ママチャリ」はそのほとんどを中国製品に市場を奪われ、気付いたときにはもう競争力など一切残されていなかった状態だ。
現に数ある日本の自転車メーカーの業務内容が「商品企画と海外へのOEM発注、そして国内での販売」という、ただの商社になってしまったため、技術的な競争など出来る状態ではない。

ここまで自転車の話だったが、時計メーカーであるセイコーにも似たような背景がある。
まず腕時計の市場だが、やはり自転車と同じようにヨーロッパに強豪ブランドメーカーがひしめき合っている状態であり、もしセイコーを初めとする日本メーカーが国内のみにターゲットを絞って商売を考えていたならば、現在の自転車メーカーと同じ末路を辿っていただろう。
そのセイコーもオープンな社風と言うわけでなく、血族経営を頑なに守ってきたという歴史がある。
しかし、経営方針はどうであれ、常に世界の市場を視野に入れて企業活動を行って来たことが現在のセイコーの地位を位置づけていると言って間違いないだろう。

セイコーの強みは自社のムーブメント(中身の機械)を他のメーカーに供給しているところだろう。
ちょうど同じことがヨーロッパブランドのOEMで有名な自転車メーカーのGIANTにも言えるが、やはり商品そのものを作る技術を持っているところが一番強いというもの。
かの有名なタグ・ホイヤーもセイコーからの部品供給を受けると発表したニュースが印象に残っているが、それこそセイコーが時計界の第一線にいるという証ではないだろうか。

例えば、イタリアにPINARELLO(ピナレロ)という世界一流メーカーがあるが、近年では台湾OEMの噂が市場に出回り、ブランドイメージの低下を招いている問題があるが、反対に言えばそれほどOEMメーカーの技術力が高いと言う証明にもなっている。
もしかすれば今後ピナレロが完全にブランド名だけのメーカーとなってしまい衰退の一途を辿れば、かわりに台湾メーカーが自社名を堂々と表に出してヨーロッパに攻め込んで来るという日もそうと遠くないのかもしれない。

イタリア本国製(塗装と仕上げ)のピナレロ PARIS

このように高級ブランドメーカーはその自らのブランドを維持するために身動きが取れなくなるといったことが多々あるが、セイコーはグランドセイコーに代表される高級モデルから、クオーツ式の廉価帯まで、ほとんどに自社のネームを冠している。
これが良いか悪いかはブランド戦略も含め一概には言えないが、セイコーの名前を冠するからには、廉価商品であってもその性能に自身があるということなのかもしれない。

セイコーファイブはまさにそんなモデルではないだろうか。


「SEIKO 5」の評価

【良い点】
・安い、機械式としては破格
・価格からは想像できないクオリティーの高さ
・文字盤に輝くSEIKOのロゴに存在感がある
・裏がスケルトンで機械を見て楽しめる
・デイ&デイト表示(デイト(曜日)の表示は好みが分かれるが・・・)

【悪い点】
・文字盤に5の透かしがあるものがあり、シンプル好きには邪魔かも
・竜頭が4時の方向にあるのが特徴だが、サイズが小さく回しにくい
・個体によって日差にかなり差がある。
・巻きブレスがズバリ安物そのもの

以上のように、やはりブレスに関しては不満が残ってしまう結果となる。
とは言え一万円以下で買える機械式時計が他にないため、間違いなく貴重な存在。

通称「裏スケ」

欠点も機械式時計と思えば「あばたもえくぼ」なのかもしれない。
実際使ってみてしばらくは違和感を感じたが、慣れてくると機械式独特の生きている感じが伝わってきた。
また、ブレスに関してはジャラジャラというよりはシャラシャラという安時計特有の軽さがあったため、即座に革バンドに変更した。

高級時計とは違い、容赦なく使えるというところがやはり一番のポイントだろう。
それが逆に愛着を深めるきっかけとなった気もする。

SKN3○○KCシリーズ


個人的には純正のメタルブレスはどうしても好きになれないため、革バンドへの交換をおすすめする。
ただし一つだけ注意事項があり、「SNK355KC」などは通販サイトでのスペック上はバンド幅は16mmとなって場合があるが、実際測定してみるとラグ幅は18mmとなっていた。
amazonなどで最初にまとめて購入すると思わぬ失敗があるかもしれないので、現物を見てから考えるのが無難そうだ。

価格がとても安いので例え100本買っても高級スイス時計1本分の価格だ。
ファイブシリーズは海外に多く出回っているため、日本にわずかしか入荷していない希少モデルも多いため、コレクションしてみるのも面白いかもしれない。
もし最初にお試しということであれば「SKN3○○KC」というモデルがもっとも安く購入できる。

SNK355KC
SNK357KC
SNK361KC
SNK381KC
SNK385KC
SNK393KC

以上のモデルは文字盤のデザイン違いとなっている。
ちなみに品番の最後のアルファベットが「K」となっているものは海外生産、「J」となっているものは国内生産と言われている。
性能的に大きな違いはなく価格が数千円差のため、この際思いっきり安い海外生産ものを買って見るのも良いかもしれない。

またベルト交換が不可能なタイプも存在するため、よく検討することが必要。

ベルト交換不可モデル

革ベルトと文字盤の組み合わせとしては・・・

文字盤:白 × ベルト:茶 (google画像検索)
文字盤:白 × ベルト:黒 (google画像検索)
文字盤:黒 × ベルト:黒 (google画像検索)

などがオシャレで使い勝手がいいと思う。

それでももしセイコーファイブはちょっと・・・と思うこともあるかもしれない。
確かに価格が安すぎるため、知っている人間には「時計通」と見られるか、「安い時計」と見られるか紙一重だ。

そんな時は、セイコーメカニカルがオススメ。

SEIKO SARB033




一部で「プアマンズGS」などと呼ばれているが、それはつまり安いながら高品質という意味。
大き目の竜頭に機械式ならではの存在感のある太い針。
この黒革ベルト仕様はかなりオシャレだと思うし、会社での上司のウケも良いかもしれない。
これから社会人になるフレッシュマンで時計選びに迷っているなら、こんなシブめの選択も十分アリだ。

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